カイン的殺人衝動の考察

読書の感想。
もし神が存在するならば、秩序が其処にあるはずである。
秩序の外、すなわち楽園の境外郭が存在するならば、それは異端であり、刑地である。
神の範疇外に置かれたカインは殺人を犯したが、神が要るとするならば、それは秩序外のことであると言える。そこは異端の地なのである。しかし、外と内が存在する限り、境界が存在し得ねばならない。境界の切れ目における接点が異端なのか殉教なのか、それが問題なのである。
神がいないとするならば、秩序は成り立たない。自身のよりどころとなる秩序が存在しないならば、人間は成り立たない。なぜならば、よりどころが其すなわち次の秩序と成り得てしまうからである。
殺意のない殺人は事故である。そして、理由のない殺意はない。それと同義である。
明と暗、善と悪、光と闇、相反する事象には境界が見え隠れする。
相反する事象が強ければ強いほど、揺らいだベールに包まれた曖昧糢糊な境界は散文的な解釈を求められるのである。
明と暗には黄昏が、善と悪には偽善が、光と闇には影が、必ず存在するように。
境界は不安定だが心地よい。

そして、「生」と「死」の間の境界、それこそが人間の在り方なのである。
参照/旧約聖書屍鬼